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名前:葛城緋嘉子
intheair
旅人は砂を踏みしめ歩く
水を求めていた
腰につけた鈴の音は
灼熱の風に掻き消され
微かな滴のように
砂に落ちては溶けていった
ひび割れた煉瓦と
死んだ草木を斜陽が照らし出す
旅人はその狭間の
砂混じりの一滴を含み寝転んだ
月の光は地熱を奪い
白さを増して天へ昇る
氷の粒に似た星星は
砂漠を冷ややかに覆っていた
旅人が身を振るわせると
鈴は微かに揺れて
密やかなささやきを
冷えた砂の中へ染み込ませた
明くる日も旅人は水を求めた
足跡は間もなく
熱風に掻き消されて
鈴はただ静かに
陽の光線を反射して
蜃気楼を浮標していた
その夜旅人は
月光を受けて白く光る
湿った砂地へ辿り着いた
潤いを含んだ足音は
鈴の音に負けず
澄んだ響きを生み出している
目前にゆらゆらと輝き
豊かに波音を奏でる水を
旅人が一掬い含むと
溢れた滴が次次波紋を立てる
旅人は満ち足りた顔で
身を横たえると息絶えた
幾度陽と月が廻ったか
やがて旅人は砂に変わり
寄せては返す波にさらわれて
深い水の世界へ旅立った
遺された砂の上には
銀の鈴が今も眠っている